FP1級通信添削.12の解答解説:遺留分に関する問題
前回の、FP1級通信添削の解答・解説をお届けします。
今回は、相続の分野から、法律の理解と実務について取り上げてみました。
お二人から解答をいただきました。
その内容を踏まえて、解答と解説をお送りします。
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2018年1月 FP技能士1級学科 基礎編 問46(一部改題)
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民法における遺言と遺留分に関する次の記述について、答えなさい。
1) 「被相続人が相続開始前1年以内に相続人に贈与した財産は、贈与者および受贈者が遺留分権利者に損害を加えることを知っていたかどうかにかかわらず、遺留分の算定の基礎となる財産の価額に加算する。」
この記述は適切か、不適切か答えなさい。
■お送りいただいた解答
適切。遺留分の算定の基礎となる財産については、相続開始前の1年間にした
贈与について算入する。
■お送りいただいた解答
適切
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解答ありがとうございます。
これは「適切」であっていますね。
2級でも出題される内容ですから、詳しくは皆様がお持ちのテキストをご確認くださいね。
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2) 1)の記述内の「遺留分権利者に損害を加えることを知っている」とは、要するにどのようなことを指しているのか、答えなさい。
■お送りいただいた解答
・贈与財産の全財産に占める割合
・贈与の時期
・贈与者の年齢
・健康状態
・職業などから将来財産が増加する可能性が少なく、その贈与をなしたら遺留分を侵害するといえたか
から総合判断する。
■お送りいただいた解答
贈与の当時において「その贈与が遺留分を侵害するとの認識があること」及び「将来において故人の財産が増加しないという予見があること」
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この問題は、実務知識を問う問題にしました。
これにこたえられるなら、小難しい内容を実例とともに理解できるので、FP1級レベルの内容も記憶に残りやすく、学習効果も高まることでしょう。
お二人にお答えいただいたとおり、キーワードは「遺留分の侵害」するほどの「相続財産の減少」です。
法定相続人が複数人いる場合において、ある相続人に生前贈与をすることで、他の相続人の相続財産が減少してしまいます。
結果として、他の相続人に財産がいきわたらなくなり、しかも遺留分すら減少させられてしまい、大きな不利益を被ることを指した言葉ですね。
このような、相続時に不公平が生じる問題に対応するために、この規定が存在しているのです。
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3) 「遺留分権利者が相続の開始前において遺留分の放棄をするためには、家庭裁判所の許可を受けなければならない。」
この記述は適切か、不適切か答えなさい。
■お送りいただいた解答
適切。家庭裁判所の許可を得ることで、相続の開始前(被相続人の生存中)に、
遺留分を放棄することが可能となる。
■お送りいただいた解答
適切
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お二人とも回答ありがとうございます。
答えは「適切」であっています。
遺留分は生前に放棄ができますが、必ず家庭裁判所の許可が必要です。
当事者間で契約書などを作っておいたとしても、法律上はその効力は生じないという点を理解しておきましょう。
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4) 遺留分の放棄を家庭裁判所が許可してくれるのは、どのような条件がある場合なのかを答えなさい。
■お送りいただいた解答
・放棄が遺留分権利者の自由意思に基づいているか
・放棄の理由に合理性があるか
・放棄の代償が支払われているか
等が主に挙げられるが、遺留分を放棄しても相続放棄とは違うので、
相続を放棄する場合は、相続開始後3ヵ月以内に相続放棄の手続きが
必要となる。
■お送りいただいた解答
遺留分を放棄することが放棄をする人の自分の意思によるのか(強制されていないか)。
遺留分の放棄に合理的な理由があるか。
放棄に見合う代償を得ているか。
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お二人ともご解答ありがとうございます。
解答いただいた観点であっていますね。
実は、遺留分の放棄を、家庭裁判所は簡単には認めてくれません。
それ相当の条件がないと、認めてはくれないのです。
遺留分放棄のアドバイスとしてよくあるのが、事業承継対策での自社株の生前贈与です。
相続時に自社株を後継者一人に集中的に相続させてしまうと、他の相続人の相続分が極端に少なくなり、遺留分減殺請求権を行使されることがあり得ます。そうなると、株式が相続人の間で分散してしまい、以後の経営に支障が出てしまうことがあります。
それを防止するために、後継者以外の相続人に対して、十分な額の生前贈与を行うのと引き換えに、遺留分を放棄してもらう方法をとることがあるのです。
今回の解説は以上です。
「この言い回し、要するにどういうこと?」と思ったら、ぜひ自分で実例を探すなどして疑問を解消するようにしてくださいね。
それが、難関1級試験の得点を伸ばす力になりますからね!
今回は一言コメントもいただいていますので、それは今週に別途ご紹介しますね。
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