FP1級通信添削.17の解答解説:小規模宅地の特例に関する問題
先週の、FP1級通信添削の解答・解説をお届けします。
7/29(日)に、「FP1級新制度&制度改正事項 徹底対策勉強会」を開催します。
この勉強会で使用する問題から、一部抜粋して出題しています。
今回も、皆様から解答をいただきました。
その解答をご紹介しながら、私からも解説をお伝えしますね。
では、最初のお送りいただいた解答をご紹介します。
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7/29(日)開催のFP1級新制度&制度改正事項 徹底対策勉強会より、さらに改題
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2018年4月1日以後の相続または遺贈(以下「相続等」)において、小規模宅地の特例(以下「本特例」)に関する税制が一部改正された。
改正後の下記の記述について、正しい場合は〇を記入のうえ、一言程度の補足説明を加えてください。
記述が誤りの場合は、誤りの箇所を正しい記述に訂正しなさい。
「被相続人がその宅地を貸付事業の用に供していても、相続開始3年以内に貸付事業を開始した宅地の場合には、原則として本特例を適用できない。ただし例外として、相続開始3年以内に事業的規模での貸付を開始した場合には本特例を適用できる。」
■お送りいただいた解答
○
貸付事業用宅地等の特例とは、一定の条件を満たした場合、その土地の相続税
評価額が200平方メートルまで50%減額される特例ですが、直前にタワーマンション
等の不動産を購入し賃貸させて、相続税負担を軽減する事案などが問題となって、
相続開始前3年以内に貸し付けを開始した不動産については、この特例の適用
対象から除外されることとなりました。
ただし、事業的規模(5棟10室)で貸付けを行っている場合は除外されます。
適用の時期は、平成30年4月1日以後に、相続または遺贈により取得する財産に
対して適用されます。つまり、それ以前から貸付事業の用に供されている宅地等に
ついては、今回の改正の適用外となります。
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解答ありがとうございました。
いただいた解答は 〇 とのことでしたが、正しくは × です。
上記の記述は誤りが含まれているのです。
補足説明で書いていただいた点を、一つずつ見ていきましょう。
「直前にタワーマンション等の不動産を購入し賃貸させて、相続税負担を軽減する事案などが問題となって」とありますが、これが改正のきっかけともなった事案ですね。
そもそも、小規模宅地の特例が作られた背景は何だったかといいますと・・・
被相続人が所有していた土地を遺族が相続したときに、その土地を引き継いで生活しようにも、その土地を売らなければ相続税を払えない、という問題に配慮し、この特例が設けられたわけです。
しかし、相続税対策のテクニックとして、相続発生の直前に財産に賃貸マンションなどを組み込み、相続税を減らす行為が横行しています。
これが本来の特例の趣旨に反するという解釈から、このたび小規模宅地の特例が見直されたのです。
その形式的な基準が「相続発生前の3年間」です。
相続発生から3年以内の貸付事業用宅地は、「相続税を減らすための行為」と形式的にみなすことにより、小規模宅地の特例の適用除外とすることになったわけです。
たとえ本当に生活の必要性などの理由から賃貸マンション経営を始めたとしても・・・です。
形式的な判定方法ですからね。
次に、書いていただいた記述「ただし、事業的規模(5棟10室)で貸付けを行っている場合は除外されます」ですが、事業的規模だからといって除外されるというわけではないのです。ここがこの問題のキモの部分ですが、これについては次の方の解答のところでご説明していきますね。
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「被相続人がその宅地を貸付事業の用に供していても、相続開始3年以内に貸付事業を開始した宅地の場合には、原則として本特例を適用できない。ただし例外として、相続開始3年以内に事業的規模での貸付を開始した場合には本特例を適用できる。」
■お送りいただいた解答
相続開始3年以内に事業的規模での貸付を開始した場合には本特例を適用できる
↓
相続開始自前3年を超えて事業的で規模で貸し付けを行っている者が
当該貸し付けの事業の用に供しているものを除く。
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解答ありがとうございます。
正しく文章を直せていますね。
先の解説にもありましたように、相続発生の直前3年間に開始した貸付事業の宅地は、小規模宅地の特例の適用対象外です。
しかし、長年貸付事業を営んでいた人にとっては、そもそも「節税対策のため」に行っているわけではないはずです。
ですからこのような立場の人に配慮して、
・相続発生の3年以上前から、事業的規模で貸し付け事業を行っていた場合は、
・相続発生3年以内に土地を手に入れ、それを貸付事業に使ったとしても、
・その貸付事業用の土地は、小規模宅地の特例を適用できることとする
という規定も盛り込まれたのです。
ここで大切なポイントは、相続発生3年以内に貸付事業を始めた宅地に対する、次の違いです。
・相続発生の3年以上前から事業的規模で貸付事業をしていれば、小規模宅地の特例の適用を受けられる
・相続発生3年以内に事業的規模で貸付事業を始めても、小規模宅地の特例の適用は受けられない
なぜなら、富裕層は相続開始の直前に、いきなり事業的規模で貸付事業を行えるだけの財産があるわけですからね。
その節税対策を封じるために、「長年貸付事業をしている人は、適用を受けられる」という例外規定を設けたのです。
勘違いしやすいところなので、ここはよく理解しておいてくださいね。
では最後に、お一人目の方の解答に含まれていた次の内容も理解しておきましょう。
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適用の時期は、平成30年4月1日以後に、相続または遺贈により取得する財産に
対して適用されます。つまり、それ以前から貸付事業の用に供されている宅地等に
ついては、今回の改正の適用外となります。
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この内容についても、理解しておきましょう。
この改正は急に決まって施行されたわけですから、国側からの一定の配慮ということで、今年4月以降に取得する貸付事業用宅地に対して適用を始めるということです。
これからの相続税対策においては、十分に注意が必要ですね。
以上が本問の解説です。
貸付事業用宅地以外にも、特定居住用宅地のほうでも改正がありますので、そちらも皆さん、しっかり理解しておいてくださいね。
こういった制度改正を、集中的に学べるのが7/29(日)に開催する「FP1級新制度&制度改正事項 徹底対策勉強会」です。
制度改正を幅広く学べますので、次の試験で得点アップを狙う方は、ぜひご参加くださいね。
この勉強会の詳細と参加申し込みは、下記URLよりお願いいたします。
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今回いただいた一言コメントは、後日ご紹介させていただく予定です。
次回の新制度・制度改正問題は、明日に配信しますので、お楽しみに!
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今後の勉強会の開催予定
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■7/22(日) 難関FP1級学科を乗り越えるための合格ガイダンス会
■7/29(日) FP1級新制度&制度改正事項 徹底対策勉強会
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