FP1級通信添削.4の解答:ふるさと納税に関する問題
前回の、FP1級通信添削の解答・解説をお届けします。
今回のお題となる問題は、こちらでした。
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2018年1月 FP技能士1級学科 基礎編 問29(一部改題)
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「ふるさと納税ワンストップ特例制度」(以下、「本制度」という)に関する次の記述のうち、それぞれ適切/不適切のいずれかを答えるとともに、あなたがFPとなったつもりで一言程度、関連する補足説明を加えてください。
1) 年間5万円までの寄附が本制度の対象となるため、同一年中に自治体に対して合計5万円を超える寄附を行った者は、本制度の適用を受けることができない。
2) 給与所得者のうち、年末調整で住宅借入金等特別控除の適用を受けている者は、本制度の適用を受けることができない。
3) 本制度の適用を受けるためには、自治体に対して行う寄附ごとに、「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を提出する必要がある。
4) 本制度の適用を受けた場合、確定申告をすることなく、所得税における寄附金控除の適用を受けることができ、寄附を行った年分の所得税の還付を受けることができる。
【追加問題(余力がある方向けの任意回答)】
そもそも「ふるさと納税ワンストップ特例制度」とは何でしょうか?
一般の方にも分かるよう、あなたがFPになったつもりで簡単に説明して下さい。
※これを説明できるかが、本問を得点する上での大きなポイントとなります!
【一言メッセージ(質問、言いたい事、FP体験談、なんでもOK!任意回答)】
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それでは、皆様から頂いた解答を、ご紹介していきますね。
■お寄せいただいた解答
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1) 不適切
寄附額の上限は寄附者の年収によって異なるから。
2) 不適切
3) 適切
4) 不適切
寄附を行った自治体か6カ所以上の場合は確定申告が必要だから。
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ご解答ありがとうございました!
3番目の選択肢が適切、それ以外の選択肢が不適切、が正解です。
1についての補足ですが、寄付額の上限は年収によって異なるのではなく、上限自体は設けられていません。
ですが、所得税と住民税から還付・控除を受けられる金額(自己負担0円で返礼品をもらえる金額)には上限があります。
おそらくそれをイメージできていらっしゃったと思いますが、自分で文章を書くとなると、こういう細かいところにも注意が必要になりますね。
1級の実技試験では、「誤った説明」として採点されかねないので、注意してくださいね。
4についての解説も、少し補足しますね。
寄附を行った自治体が6カ所以上の場合は確定申告が必要、という点はご記入の通りです。
ただこの説明では、選択肢の誤りを正しく指摘できたということにはならないです。
選択肢の何が間違っているかというと、「寄附を行った年分の所得税の還付を受けることができる」が誤りなのです。
正しくは、「所得税からの控除は行われず、その分も含めた控除額の全額が、ふるさと納税を行った翌年度の住民税の減額という形で控除される」なのです。
これについては総務省のふるさと納税の手続きのページで、説明されています。
こちらも、参考にしてくださいね。
■お寄せいただいた解答
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|1) 年間5万円までの寄附が本制度の対象となるため、同一年中に自治体に
|対して合計5万円を超える寄附を行った者は、本制度の適用を受けることが
|できない。
不適切/寄付金控除額の上限は、所得によって異なる
|2) 給与所得者のうち、年末調整で住宅借入金等特別控除の適用を受けている
|者は、本制度の適用を受けることができない。
不適切/住宅借入金等特別控除とは関係無く適用を受けることができる
|3) 本制度の適用を受けるためには、自治体に対して行う寄附ごとに、
|「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を提出する必要がある。
適切/記述通り
|4) 本制度の適用を受けた場合、確定申告をすることなく、所得税における
|寄附金控除の適用を受けることができ、寄附を行った年分の所得税の
|還付を受けることができる。
不適切/寄附を行った翌年分の住民税の還付を受けることができる
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解答ありがとうございました。選択肢3のみが適切ですね。
ご記入いただいた解説について、補足します。
選択肢1については、すでにご説明の通りです。
選択肢2ですが、住宅借入金等特別控除の有無にかかわらず、適用を受けることができます。
が、世間では住宅借入金等特別控除とふるさと納税ワンストップ特例制度の併用時には注意が必要、と言われています。それについては、次の回答者のコメントに記載されていますので、そちらでご紹介しますね。
選択肢4ですが、ニュアンスは間違っていませんが、ちょっとだけ補足をします。
寄附を行った翌年分の住民税の「還付を受けることができる」ではなく「住民税を減額して納付する」が正しいです。
住民税には、原則として還付の仕組みは存在しないのです。
所得税には源泉徴収という税の前払いの仕組みがあり、そのために税の還付(納めすぎた税額を、現金で返してもらう)が生じることがあります。
しかし住民税は、所得額が確定してから、翌年度に支払うという後払いの税金のため、還付の仕組みはないのです。
ですから「住民税を減額して納付する」が正しい表現になるのです。
マニアックな話になってきたな~(笑)と自分でも感じますが、一つ参考になればと思います。
もっとも、更正の請求(修正申告じゃないですよ~)をした場合は、住民税といえども税の納めすぎを返してもらえる(還付)ことになりますが、原則は住民税に還付の仕組みはない、と覚えておきましょう。
では最後に、次のお二人の解答を見ていきましょう。
■お寄せいただいた解答
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1)不適切
2)不適切
3)適切
4)不適切
1)は5万円と5自治体までをひっかけたのでしょうか
2)は 年末調整で住宅ローン控除を受けている給与所得者でも、ふるさと納税ワンストップ特例制度の適用を受けることは可能
ですが、住宅ローン控除を受けていて住民税からの控除上限額に達している場合には、自己負担が増えてしまうケースがありうる。
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■お寄せいただいた解答
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以下に回答します。
1.ワンストップ納税は、特例制度であり、適用対象は、寄付する自治体が5つまでとなっています。よって、不正解です。
2.住宅ローン控除適用者でも、適用可能です。よって不正解です。
3.適用されるには、寄付する自治体ごとに申告特例申請書の提出が必要です。よって正解です。
4.この制度の適用を受けた場合は、所得税の還付はなく、寄付翌年の住民税の減額により、控除をされます。
ただ、住宅ローン控除などで住民税が減額されている場合は、この制度による住民税減額が少なくなり、その結果寄付金の還付が減ってしまうことになります。
その場合は、確定申告をあえておこない、所得税でも還付を受ける余地がないかを確認するのが良いと考えます。
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お二人とも、解答いただきありがとうございました!
選択肢1について、5万円と5自治体をひっかけた問題だと私も思います。
5つ以上の自治体にふるさと納税を行った場合には、ふるさと納税ワンストップ特例制度の適用を受けることはできなくなります。
ちなみに、1つの自治体に6回ふるさと納税を行っても、自治体の数は1つとカウントされる点も、覚えておいて下さいね。
選択肢2について、補足をいただき、ありがとうございます。
こういう情報は、一般の方にとって損得に関わる内容ですから、ぜひ知っておいてほしい内容ですね。
すでに解説しました通り、ふるさと納税ワンストップ特例制度は、すべて住民税から控除を行う仕組みです。そのため、住宅借入金等特別控除と併用している方は、住民税から多額の税額が控除されるため、税額を引ききれなくなることが起こりえます。
そうなると、同じ寄付額であっても、ふるさと納税ワンストップ特例制度を利用することで控除額が結果的に小さくなるということも起こりえるのです。(言い換えると、ふるさと納税ワンストップ特例制度制度を使わなければ、もうちょっと控除額が大きくできた、という事例です)
試験対策というよりは、実務上のメリット・デメリットのお話ですね。
補足いただきありがとうございました。
本日の解説は以上です。
ふるさと納税ワンストップ特例制度そのものの説明についての皆様からの解答と、いただいた一言コメントは、今週どこかで別途ご紹介のうえ、私からもコメントをお返ししたいと思っています。
次の問題は、明日にお送りします。
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